日本全国で愛されている伝統的な料理であるすき焼きは、多くの食卓を彩っています。
ある調査によると鍋料理の消費率にも常に名を連ねるほどの人気ぶりです。
この料理は特別な日に食べることが多いですが、関東と関西では作り方が大きく異なります。
私が関東生まれの関東風すき焼きしか知らなかったころ、京都で出会った関西風のすき焼きはまるで別物のように感じました。
「これって本当にすき焼き? 焼肉のようだ」と驚いたものです。
関東では具材を甘辛い割り下で煮込むスタイルが一般的ですが、関西では牛脂を利用して具材を焼く方法が取られます。
今回は、このふたつのスタイルの特徴に焦点を当ててご紹介します。
異なる地方でのすき焼きを用いたおもてなしを考えている方にとっても役立つ情報です。
すき焼きの起源とその歴史について
すき焼きは、牛肉や野菜などを甘辛く味付けした割り下で煮たり焼いたりする、日本独自の料理です。
一般的には溶き卵につけて食べられます。
この料理の名前にはいくつかの説がありますが、一つは江戸時代に使い古した鋤で食材を焼いたことから「鋤焼き」と呼ばれるようになり、これが変化して「すき焼き」となったというものです。
もう一つの説は、薄切り肉を意味する「剥身」を焼いたことから「剥き焼き」が「すき焼き」に転じたとされています。
すき焼きが日本に広まる背景
すき焼きが日本で広く食べられるようになったのは、江戸時代末期から明治維新の頃にかけてです。
それまでは牛肉を食べる文化がほとんどありませんでしたが、明治に入ると「文明開化」とともに牛肉を食べる文化が広がり、すき焼きが受け入れられるようになりました。
最初にすき焼きが紹介されたのは関東の横浜と関西の京都で、初めは「牛鍋」と呼ばれていましたが、やがて関東でも関西でも「すき焼き」という名前で呼ばれるようになりました。
関東風と関西風、すき焼きの違いとは
日本が誇る伝統料理の一つ、すき焼きには、関東風と関西風という二つの大きな流派があります。
ここでは、その違いについて深く掘り下げて解説します。
まるで別の料理?鍋と焼肉の違い
関東風と関西風すき焼きの最大の違いは、料理の分類にあります。
調査によれば、すき焼きは鍋料理としての人気が高いことが分かっています。
関東でのすき焼きは、伝統的に「牛鍋」とも呼ばれ、割り下を使用して肉や野菜を煮込むスタイルです。
この地方では、具材を割り下でじっくりと煮込むことが特徴で、主に牛肉を使用しますが、北海道などの一部地域では豚肉を用いる場合もあります。
一方、関西風すき焼きは、調理の中心に「焼き」があり、その点で焼肉の要素を持っています。
関西では、最初に牛脂で肉を焼き、その後独特の方法で調味料を加えることで、独自の風味を創り出します。
調味料の使い分けとタイミング
関東風と関西風のすき焼きは、調味料の使い方とその加えるタイミングにおいてもはっきりとした差があります。
関東風では、まず割り下を鍋に入れて沸かし、その後に具材を加えていきます。
これにより、どの家庭でも均一の味わいを実現できます。
対照的に、関西風のすき焼きは、調理の技術がより求められます。
最初に牛脂で肉を焼き、適当に火が通ったら砂糖をふりかけ、醤油で味を整え、水分の多い野菜を最後に重ねて焼きます。
野菜によって異なる水分量を見極め、調味料が煮詰まり過ぎないようにする技術が必要です。
このため、関西風すき焼きは調理人の腕の見せ場とされています。
すき焼きに使う具材の違い
関東と関西のすき焼きでは、使用する具材に細かな違いがあります。
どちらの地域でも主役は変わらず牛肉ですが、豆腐、ネギ、春菊、しらたき、椎茸、お麩などの一般的な具材は共通しています。
すき焼きは、特別な日に楽しむご馳走であり、ニンジンやかまぼこを加えたり、最後にうどんや雑炊で締めるといった、家庭によるアレンジも楽しまれます。
ただし、関東と関西で明らかに異なるのが白菜の利用です。
関西風では、割り下を使わない分、野菜から出る水分で味を整えるため、水分量が多い白菜が適しています。
さらに、水分が多くて甘みのある玉ねぎも頻繁に使われます。
関東風すき焼きの作り方
関東風のすき焼きは、「牛鍋」として横浜で始まった明治時代の料理がルーツです。
酒、みりん、醤油、砂糖を合わせた割り下を使って、肉や野菜を煮込むのが特徴的な調理法です。
割り下の基本レシピ
関東風すき焼きの割り下は、地域や個人の好みによって異なりますが、一般に好まれるのは「甘くて濃い」味わいです。
そのための基本的な割合は以下の通りです。
- 酒:100ml
- みりん:100ml
- 醤油:100ml
- 砂糖:30g
この割り下を使って、肉や野菜をじっくり煮込みます。
関東風すき焼きの典型的な調理手順
関東風すき焼きを作る際の一連の手順は次のようになります。
- 鍋を温めてから牛脂を溶かします。
- 長ネギを加えて、焼き色がつくまで焼きます。
- 牛肉を広げながら入れ、軽く焼きます。
- 割り下を足して具材が覆われる程度にし、他の具材を加えて煮立てます。
- 食感と香りが重要な春菊は、最後に加えて軽く煮るだけで完成です。
関東流のすき焼き、おすすめの作り方
関東地方の伝統的なすき焼き作りでは、具材を入れる順番に工夫を凝らすことが、美味しさの秘訣となります。
まず最初に鍋にしらたきを入れて炒め、余分な水分を飛ばすことから始めます。
その後、しらたきと一緒に焼き豆腐を加えて混ぜ合わせます。
割り下を加えた後は、火力を上げてアルコール分を飛ばします。続いて、牛肉やネギ、椎茸を投入し、煮込んでいきます。
最後に春菊を加えて煮ることで、料理は完成します。
一般的なレシピが牛脂で肉を先に焼く手順を紹介する中、この方法では肉を少しずつ加えることで、肉本来の旨みを存分に引き出し、他の具材とも良く馴染ませることができます。
甘辛い割り下の理想比
関東風すき焼きにおける割り下の甘辛さは、料理の味全体に大きな影響を及ぼします。
醤油、みりん、酒を同量1:1:1で混ぜ、砂糖はその約3分の1の量を加えるのが一般的です。
さらに、割り下の理想的な比率は、みりん5に対して酒3、濃口醤油1です。
この配合で作る割り下を使うと、すき焼きの具材と溶き卵との絶妙なマッチングを楽しむことができます。
関西風すき焼きの調理のコツ
基本的に、「焼き肉」として扱われる関西風すき焼きでは、割り下を使わずに牛脂で肉を先に焼きます。
肉が半分程度焼けたところで、砂糖、醤油、酒を加えて味付けし、ネギ、春菊、しらたき、椎茸などの具材を入れて完成させます。
関西流すき焼き、具体的な作り方
まずは鍋を熱して牛脂を溶かし、その上で肉を広げて焼きます。
肉が8割程度焼けたら、砂糖を振りかけ、続いて醤油と酒を加えます。
次に、肉を鍋の端によせて、水分の多い白菜や玉ねぎを入れ、さらに他の野菜や豆腐を加え、具材から出た水分で軽く煮立てます。
この作り方では、加える野菜の種類や量によって変わる水分量を調整する必要があり、完成度は料理をする人の腕によって決まります。
まとめ:すき焼きの多彩な魅力
関東と関西、それぞれの地域で愛されるすき焼きの作り方には、同じ日本料理でありながらも、その調理法や食文化に大きな違いがあります。
関東風のすき焼きは具材を割り下で煮込む「鍋料理」としての特徴を持ち、一方で関西風のすき焼きは、牛脂で肉を焼き上げる「焼き肉」のスタイルが特徴です。
このように見える違いは、割り下の使用の有無に表れているように思えますが、それぞれの地域が持つ独自の食文化や調理法の違いが、これらの特徴を生み出しています。
関東では、じっくりと具材を煮込むことで深みのある味わいを、関西では焼き加減と砂糖と醤油のバランスが直接肉の美味しさを引き立てます。
関東風では肉を少しずつ加えることで全ての具材の味を引き立てるという方法や、関西風では具材の水分量を見極めながら調理する技術など、それぞれの地域に根ざした独特の調理法がすき焼きの多様性を豊かにしています。
どちらのスタイルも、その地域特有の食文化や歴史が反映されたすき焼きは、日本の多様な食文化の一端を垣間見ることができます。
個人の好みやシーンに応じて、関東風、関西風のどちらのすき焼きも楽しむことが、日本料理の深い魅力をさらに発見することにつながるでしょう。
多様性あふれるすき焼きを通じて、日本の豊かな食文化を再確認し、新たな発見を楽しむ機会となれば幸いです。